Share

裏切り 10

Auteur: 煉彩
last update Dernière mise à jour: 2025-10-09 22:21:59

「良かった。治りました」

 私が彼にそう伝えると

「ありがとう」

 とても柔らかな表情だった。

「さっきはキツく当たってしまって悪かった。もうキミを傷つけたくはないのに、助けられなかった自分に苛立った」

「いいえ。私こそ。本当のことを伝えるのが怖くて。カートレット様に迷惑をかけてばかりいる自分も嫌で。申し訳ございません」

 ペコっと頭を下げた。

「あ、カーレット様。こんなところにも傷が……」

 彼の頬に数センチほどの切り傷があった。

 先ほどと動揺、岩で切ってしまったんだろう。

 私が彼の頬に手を添え、力を使おうとすると

「すまない。もう我慢ができない」

「えっ?」

 彼は私の顎を持ち、チュッと唇を合わせた。

 温かい、この感触。さっきも……。

 唇が離れ

「カートレット様、もしかして先ほども私に空気を送るために?」

「ああ。後先考えていられなかったからな。唇を重ね、空気を送った」

 あれは私を助けるためだったかもしれないけれど、今のキスがはじめてじゃないんだ。

「私からも……。したいです。カートレット様が許してくださるのであれば」

 彼はクスっと笑い

「良いに決まっている」

 そう言ってくれた。

 私は彼の頬に手を添え、治癒力で傷を癒したあと、そのまま彼の唇に自分の唇を合わせた。

 好きな人とのキスは、こんなにも幸せな気持ちになるのね。

 フフっと笑ってしまうと

「アイリス。キミは俺が守る。信じてくれ」

 そう言われ、誓いのキスともとれるほど、熱くて深いキスをされた。

 しばらくは二人で抱き合っていた。

 彼の腕の中は安心するし、離れたくないと思ってしまう。

 キスももっとしたかったけれど

「この格好でキスを続けたら、それ以上のことをしたくなる」

 そう言われ、止められた。

 その時のカートレット様はまるでテレている子どものように恥かしそうにしていた。

 二人で帰宅をし、メイド長をはじめ皆から心配をされた。

「どこに行ってらしたんですか?アイリスも急に姿が見えなくなるし、ご主人様も急にいなくなったとカイル様が随分探していらっしゃいましたよ」

 メイド長は私に何が起こったのか、知らない様子だった。

「悪かった。エリスは帰っているか?呼び出してくれ」

 エリス、どんな顔をして会ったら良いか。

 しばらくすると俯いたエリスが広間に顔を出した。

 ここには今、屋
Continuez à lire ce livre gratuitement
Scanner le code pour télécharger l'application
Chapitre verrouillé

Latest chapter

  • 囚われの聖女は俺様騎士団長に寵愛される   最終話

    …・・…・…・・…・・「報告は以上です。皇帝陛下」  王座の間。  アイリスについての報告のため、皇居を訪れていた。「うむ。それでアイリス・ブランドンは、その日を境に全く力が使えなくなってしまったということだな」「はい」 アイリスはあの日以降、治癒力が使えなくなった。 いや、正確に言えば力が弱まってしまった。 容姿が変わるほどの力の発現が原因なのではないかと思う。「そこで皇帝陛下、私に提案があります」「なんだ?」 陛下はヒゲを整えながら、珍しいなという風に興味を抱いているようだった。「彼女の治癒力が再度現れる可能性は大いにあります。そのため、彼女を狙ってくる奴等も多いでしょう。それは帝国にとっても敵。逆に彼女が居れば、こちらが有利に働くこともあります。聖女の力は傷を癒すだけではなく、祈りにより人々の心を救います。彼女を守るのは、私に任せてもらえませんか?」「ほう……」 陛下は「任せるとは……?」確信的な部分に触れてきた。「アイリス・ブランドンと結婚をさせてください。この国で一番戦力があるのは私です。夫となり、彼女を守りながら力を引き出し、二人で人々を救います」 皇帝は話を最後まで聞き「承認をしよう。聖女は貴重な存在だ。また力が発現できるよう努めてくれ。国にとっても有益な人物になるだろう」 そう答えた。「ありがとうございます」 俺が頭を下げると「もしも私がダメだと言ったら、どうしていた?そちらを考える方が怖いわ」   ハハハっと声を出して笑った。 皇帝の様子につられて口角が上がってしまったが、もしも許可が下りなかった時、その時はーー。「レオン!おかえりなさい!」 皇居へ向かった後、帰宅をするとアイリスが笑顔で出迎えてくれた。「ただいま」 彼女を抱きしめ、頬にキスをする。 まさか自分にこのような大切な存在ができるとは思わなかった。「陛下は理解してくださった。今度二人で挨拶に行こうか?」 アイリスには事前に全て説明をしていた。「もしも力が戻ったら、人々のために使いたい」そう言ってくれたのは彼女だった。「はい」 彼女は最初に出逢った時と全く違う表情、頬には赤みがさし、目には生気が宿っている。「これからも俺についてきてくれるか?」「もちろんです。誓います」 彼女は迷いもなく、そう笑顔で答えてくれた。…

  • 囚われの聖女は俺様騎士団長に寵愛される   想っているから 4

    「間に合って良かった」 彼はそう言うと剣が腹部に刺さったまま、騎士の首に肘をつき、彼を気絶させた。「ぐっ……」 腹部から剣を抜くと鮮血が辺りに飛び散り、レオンも倒れてしまった。 彼を抱き起こし、腹部に力を注ぐ。「絶対に死なせない!」 お願いだから、治って! 願うも彼の出血は止まらなかった。「……。アイリス。逃げ……ろ。致命傷になった傷は……。聖女でも治せないと聞いた」「嫌!絶対に治す!あなたは私が死なせないから!」 お願い、お母様!助けて!  その時、魔導師が近くに現れ「お前は兄を殺した。復讐がやっと叶った」 ニヤリ笑って、こちらを見ている。「逃げろ……。お前だけでも……」 レオンが震えているのを感じた。 顔色も悪くなっている。「愛してる……から」 彼の視界はボヤけているようで、目線が合わなかった。  いやよ、いやだ。神様、どうか……。 私の力がなくなってもいい。 一生使えなくても良い。 私の命と引き換えでもいいから! どうか、助けてください! 彼を抱きかかえながら祈る。「バカだな。二人そろって死ね!」 魔導師が私たちに向かって火を放った。 その刹那――。「なぜだ。何が起こっている」 自分でもわからなかった。 私の髪の毛は金髪になり、光が私たちを包んでいる。「アイリ……ス?」「レオン?」 彼を見ると顔色も戻り、血も止まっていた。「片目と髪色が金色になっている?」 自分ではわからなかったが、レオンが私の容姿を見て呟いた。「もう一度だ!死ね!!」 先ほどよりも大きな火の玉がこちらに向かって飛んできた。 レオンが呟くと私たちの前にシールドができ、炎を弾いた。「先にあいつを倒す」 彼はスッと立ち上がり、剣を腰から抜いた。 魔導師が慌てて何かを放とうとするも、彼の早さにはついてこれず、切先が身体を二つにした。「全て燃えろ」 レオンが唱えると魔導師の身体は青い炎に包まれ、一瞬にして炭になった。「レオン、どうなっているの?」 気づけば私の髪色と目の色は黒に戻っていた。「俺にもよくわからない。が、本来の聖女の力が最大限に引き出せたのではないかと思う」 それよりも……と「ケガはないか!?」 カバっと両腕を掴まれ、ジッと顔を覗き込まれた。「大丈夫。レオンが守ってくれたから。レオンは

  • 囚われの聖女は俺様騎士団長に寵愛される   想っているから 3

     次の日――。 レオンは、休暇が取れたから街に出かけようと言ってくれたが、急な仕事が入ってしまったらしく、私はできる限りの雑用をこなしていた。 彼が今まで通りの生活ができるよう、配慮してくれたのだ。 執事長とメイド長はなんだか態度がぎこちないけれど、役に立ちたいという想いが強くなった。 二週間後――。 レオンと共に街に出かける機会ができた。 私も王都へ行ったことがなかったので、楽しみにしていた。レオンが用意してくれたドレスを着れることも嬉しい。「綺麗だ。似合っている」 そんな言葉をかけられ、浮かれていたのかもしれない。 いつものブローチをせず、ドレスに合った色合いのブローチを選択した。「レオンが一緒だから大丈夫よね」 不安要素などなかった。 二人で街を歩いていると「泥棒だ!誰か!助けてくれ!!」 そんな声が聞こえた。「レオン!行ってください!私は大丈夫です。騎士様たちと一緒にいるので」 私たちには一応、護衛の騎士、三名が同行していた。「わかった!すぐ戻る」 レオンは一人の騎士をつれ、声の方向へと走って行った。「アイリス様。巻き込まれたら危ないです。避難しましょう」 二名の若い騎士と一緒に、乗ってきた馬車が駐めてある広場へと移動している時だった。 黒服の男が急に現れ、私たちの前に立ちはだかった。「なんだお前は!?」 以前見たことのある、魔導師に似ている。 けれど、あいつはレオンが倒したし……。 騎士が剣を取り出そうとした時――。「うわぁぁ!!」 魔導師が何かを唱えたかと思うと、もう一人の騎士を刺していた。「な……」 ガクンと膝から崩れ、地面には血だまりができている。こんな深い傷、早く手当てをしなきゃ。 でも治癒力を使ったら……。 ううん、そんなことを考えている時間はないわ。 私は意識を集中させ、倒れている騎士に力を注いだ。「う……、あ……」 良かった、意識は取り戻したみたい。  ホッとしたのも束の間「アイリス様、離れてください!身体がいうことをきかない……!」 騎士の剣の切先が私へと向けられていた。  魔導師に操られているの? レオン、助けて……。  ブローチへ願おうとした。 けれど、今日は着けていないんだった。 自分の状況に絶望と恐怖を感じる。 騎士の剣が私に振り下ろされる

  • 囚われの聖女は俺様騎士団長に寵愛される   想っているから 2

     彼の部屋の前で深呼吸をし、ノックをする。「アイリスです。夜遅くに申し訳ございません。どうしても会いたくて」 私がドア越しに声をかけると「アイリス。どうした?こんな時間に」 彼は驚いていたが私を部屋に入れてくれた。「あのっ」 私が話そうとすると「レディが屋敷の中とはいえ、こんな時間に一人で出歩くのは感心しない」 腕組みをしながらソファに座った彼に行動を咎められた。「申し訳ございません」「しかし正直なところ、アイリスが俺の部屋へ訪問してくれることは嬉しい。だから今度からブローチへ願え。そうすれば迎えに行くから」 あれ、怒っていない。いつもの彼だ。「カートレット様に謝りたくてきたんです。エリスの件で私が発言したことを謝罪させてください。私は何もわかってはいませんでした」 深く頭を下げた。「いや。あんなことをして、アイリスに嫌われてしまったかと思った。お前が被害に遭ったんだ。きちんと意見を聞くべきだったな。すまない。今日は夜遅いから。部屋へ戻ってゆっくり休んでくれ」 彼はそう言うと、私を部屋へ送っていくと立ち上がった。 なんだか嫌われてしまった気がして、ツーと私の目から涙が零れた。「嫌です。カートレット様、私のこと、嫌いになってしまいましたか?強情な自分勝手な女だって」 はじめて恋というものをしたからだろう。 自分の感情がよくわからない。 心が繋がった相手と気持ちが離れてしまうのが怖い。 フッと笑い「そんなわけないだろう」 彼はギュっと私を抱きしめてくれた。「カートレット様。私はあなたからずっと離れません。だからあのようなことは言わないでください。これからは私があなたを支えていきたい。愛しています」 自分の口から愛しているなんて言葉が出てくるなんて思わなかった。 彼は強く私を抱きしめ返し「ああ。ずっとそばにいてくれ。愛している。俺がお前を守るから」 涙を拭いながら、優しく微笑んでくれた。 その夜は忘れない。はじめて身体を重ねた。 唇が腫れるんじゃないかと思うほど、キスを繰り返し、お互いを求めた。「ん……っ、あぁ!」 胸の膨らみの下をチュッと強く吸われ、声が漏れる。「俺のものだという印だ」「は……い。カートレット様のものです」 私が悶えながら答えると「レオン。名で呼んでほしい」 これを意味することが

  • 囚われの聖女は俺様騎士団長に寵愛される   想っているから 1

     カートレット様と心が通じ合ったと思ったのに、離れてしまったの? でも彼の行為は、私には理解できない。 その時、部屋をノックする音が聞こえた。「はい」「カイルです。夜分遅くにレディの部屋に申し訳ないのですが、一言伝えたいことがあって。入れていただけませんか?」 副団長のカイル様だった。「どうぞ」「失礼します」 ポスっとソファに座り、彼は神妙な面持ちで話し出した。「こんなことを伝えていることがバレたら、かなり怒られるんでしょうけれど、今日の団長の行いを許してあげてください」 カイル様は私に頭を下げた。「団長の両親は、部下に裏切られて殺されているんです」「えっ!」 ご両親が亡くなられていることはなんとなく察してはいたけれど、殺されていただなんて。「団長の両親、父親は彼ほどではありませんでしたが、有名な騎士でかなりの実力でした。当時の皇帝にも認められていました。それを良く思わなかった部下が罠を仕掛け、魔導師と手を組み、彼の両親を殺しました。自分の地位をあげるためです」 そんな過去があったの?「彼は自分の運命を恨むこともなく、若くしてカートレット家を継ぎ、強くなるために努力を続けました。騎士は普通、魔力には長けませんが、両親のこともあった為、剣術も魔法を使えるように毎日鍛錬を続けました。俺は幼少期から関りがあるから、それを知っていて。彼は、私利私欲の為に人を傷つける奴を許しません。世間では冷酷非道とか言われていますが、本当は優しい方なんです。もしもアイリス様でなくても、大切な人を殺されそうになったなんて知ったら、彼は自ら動くと思います。大切な家族を失くしているからこそ、同じ思いをさせたくないんだと、多くの方を救うために団長となり戦っているんです」 彼の言葉は続いた。「アイリス様はお優しいから、今回の仕打ちを酷いことだと感じていらっしゃるかもしれませんが、例えば、自分の大切な人が殺されそうになったら、傷ついたら……。同じようなことが言えますか?」 もしもお母様が生きていて、殺されそうになったら……。 私はその人をきっと許せない。 甘い考えだったんだとつくづく実感させられた。「殺人を起こそうとした者は罪人です。それを裁かず、監獄に送らなかっただけでも団長なりの配慮なんです」 彼は私の部屋から去る時に「いや、でも本当にやりすぎだと

  • 囚われの聖女は俺様騎士団長に寵愛される   裏切り 11

     彼女の姿を見て「一体どういうことだ。エリスが人を殺そうとするわけがない」「どちらが正しいんだ」「エリスはずっとご主人様を慕ってきたわ。この子がそんなことをするわけがない」 口々にエリスを擁護する声が聞こえてきた。 やっぱり、まだ来て間もない私が信じてもらえるはずはないわよね。 泣き叫ぶエリスに驚嘆を隠せない人々、雑音がその場を占めた時――。「黙れ。これが真実だ」 あれ、カートレット様にもらった私のブローチが熱いような――。 すると、ブローチから光が溢れ、映像が映された。 これはさっきの私たちだ。<貴方なんて居なくていいのよ。邪魔者。バカな女> エリスが言葉を発した次の瞬間、私は彼女によって突き飛ばされている。「なっ!これは!?」「エリスが殺そうとしたのか?」 騙すことのできない証拠を突き付けられ、彼女は絶句している。「エリス。今すぐここから出て行け」 彼が冷たく言い放った。「そんな!カートレット様!待ってください!私は、あなたのことを一番に慕っていて!それをこの女がっ!」 すがりつく彼女に「罪のない人を平気で殺そうとした奴は、俺の従者には要らない。出ていけ。これ以上騒ぐと裁判にかけるぞ」 容赦ない彼の言葉が待っていた。 出て行けって、彼女は家族から見放されたって言っていたし、行くところもないんじゃ。「カートレット様。彼女に猶予を与えてあげてください」 私は運よく生きている、反省しているのなら許してあげてほしい。「ダメだ。カイル、こいつを連れて行け」 駆け付けていた副団長のカイル様に命じ「アイリス。悪かった。本当はこのブローチから事実を見ることができたんだ。キミの口から正直に話してほしくて、先ほどは黙っていた」 私にそう伝えてくれた。 カイル様と数人の騎士がエリスを連れて行こうとすると「あんたなんか来なければこんなことにはならなかったのに!この魔女め!!」 私に向かってエリスが叫んだ。 私なんていなければ……。 たしかに私が現れなければ、彼女は今まで通りここに勤めて、普通の生活を送っていただろう。 心が乱れることもなかったかもしれないのに。 彼女の気持ちを考えるとチクッと心が痛んだ。 なんて言葉をかけて良いのか悩んでいた次の瞬間、青い光が彼女の耳元をかすめた。 青い閃光は壁を突き抜け、チリチ

Plus de chapitres
Découvrez et lisez de bons romans gratuitement
Accédez gratuitement à un grand nombre de bons romans sur GoodNovel. Téléchargez les livres que vous aimez et lisez où et quand vous voulez.
Lisez des livres gratuitement sur l'APP
Scanner le code pour lire sur l'application
DMCA.com Protection Status